今回は身近な「月経」をテーマに、漢方専門医小川恵子先生にお話を伺いました。
月経のツラさは一つじゃない だからこその「養生」
月経は、女性のライフステージである、思春期、成熟期、更年期と長期に渡り、毎月訪れます。
もし、月経でモヤモヤを抱えているとしたら、長期に渡るからこそ、早期に対処してあげることが
とても大切です。
月経に関するモヤモヤと言っても、その中身は人それぞれ。
そのため、周囲の理解が得られにくかったり、自分の抱えていることは大したことはないと考え、
蓋をしてしまうこともあるかもしれません。
とはいえ、月経時期の心や体のモヤモヤは、自分自身が黄色信号が点滅していると感じていたら、
それは紛れもない心身のサインです。
自分の状態を受け止め、早くから我慢を手放してあげましょう。
次に、なぜ女性には心身の変化の波があらわれやすいのか。
女性ホルモンの生体リズムによる変化を見てみましょう。
ホルモンの波に翻弄される女性たち
女性の生体リズムは、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の分泌によって、4つの周期に分けられます。
(グラフを選択すると拡大します。)
グラフを見ると、調子のよい時期は1週間~10日程度。
それ以外は、何らかを不調を抱えて過ごしていることがわかります。
本当はゆっくりしたいけどできない、動きたいけど動けない......。
このようなジレンマを抱えた状況が現実なのではないでしょうか。
こうした波を穏やかにするにはどうしたら良いのか。
次では、心身の状態を整える、「養生」とセルフケアについて紹介します。
月経のモヤモヤに必要なのは、日々の「養生」です
健康は、日々の積み重ねで成り立っています。
年齢が若い場合は、積み重ねが少ない分、多少の不摂生でも回復が早いのですが、
年齢を重ねると、生活習慣の積み重ねがダイレクトに健康状態に現れ、改善に時間がかかってしまいます。
だからこそ、日々の「養生」がとても大切です。
「私は年を重ねたから、もう遅い」とあきらめるのではなく、
これからの積み重ねを大切にして、明日の健康を築いていきましょう。
「養生」簡単セルフケア
ここでは、毎日無理なく続けやすい、心と体の「養生」簡単セルフケアをご紹介します。
1.「血流アップめし」をとるべし
日本人は、栄養が糖質や野菜に偏りがち。
血流を良くして体を温めるタンパク質(青魚や赤身の肉など)や、ショウガなどを積極的に摂取して。
腸内環境を整える食物繊維や、健康に役立つキノコ類も必須。
2.「湯船」入浴で温めるべし
夏時期でも空調で体が冷えていることも。シャワーだけで済ませず、季節を問わず湯船に浸かる習慣を。
湯船入浴は、体の芯から温まり、心地よいリラックスタイムに。
毎日湯船が難しい場合は、手浴や足浴など部分浴も◎。
3.ちょっとだけ頑張る運動を
普段から少しだけ負荷をかけた運動を行い、血流アップと筋肉量をキープ。
デスクワークなど同じ姿勢が続く場合は、ときどき姿勢を意識して、深呼吸を。
4.睡眠で「脳」と「体」もおやすみ
決まった時間に起床・就寝して、「脳」と「体」の休息を。
睡眠時間が足りないときは、10分くらいのお昼寝を取り入れて。
5.MY養生を見つけるべし
好きなアロマオイルを嗅いだり、香りのよいハーブティーを飲むのも◎。
自分なりの養生を見つけて、健康負債を溜めないように工夫して。
6.基礎体温をつけるべし
女性ホルモンの状態、体のリズムや低体温など、基礎体温をつけると自分の状態を可視化できます。
専用のアプリを活用しても。
取り入れやすい方法から、試してみてください。
こころとからだの元気を持ち上げる
私は、漢方医として、小児の外科手術後のケアや、その子のお母さまの「月経」に関する悩みに対して、
「漢方」でアプローチしてきました。
「漢方」は、なんとなく調子が悪い「不定愁訴」や、本格的な不調や病になる前の「未病」段階でのケアを
得意としています。
(画像を選択すると拡大します。)
月経の不調に処方する漢方は、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」、
「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」、「加味逍遙散(かみしょうようさん)」があります。
「漢方」にも使われている素材を使ったお茶や入浴剤などもありますので、普段の暮らしに取り入れ、
役立てるのも良いでしょう。
本来、月経は妊娠を準備し、未来を築く上でとても大切な体のしくみです。
その負担は、女性ひとりが負うものではないと思います。
月経のツラさへの理解、またそれを自覚し遠ざけるための手段や知識を身につけ、
女性が月経を理由に、何かをあきらめることがない社会になってほしいと思います。
Text by Tomoko Hirakawa
お話を伺ったのは...
【小川恵子先生】
広島大学病院漢方診察センターのセンター長。
日本東洋医学会指導医、日本外科学会専門医、日本小児科学会専門医。