生活の木ライブラリー

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熊本・阿蘇の小国杉
~九州限定ブレンド精油「よかみず」の香りを訪ねて~
《後編》

2026.10.21

九州の豊かな自然を、「水」をテーマに表現した、九州地方限定ブレンド精油「よかみず」。

その香りを形づくる素材のひとつが、熊本県阿蘇郡小国町で育つ小国杉*です。

前編では、大分県臼杵市のかぼす農園を訪ね、栽培から精油になるまでをたどりました。
後編では熊本県小国町へ。山々に囲まれた森に入り、小国杉が育つ環境や実際の伐採現場、枝葉の収穫から精油が生まれるまでを取材しました。

長い年月をかけて育つ一本の杉が、どのように「香り」へと姿を変えていくのでしょうか。

*小国杉は、小国町森林組合の登録商標です。

山に囲まれた小国杉の森

訪れたのは、熊本県阿蘇郡小国町。

小国町は町の約78%を山林が占め、古くから林業が盛んな地域。
阿蘇外輪山の北側に位置し、270年以上にわたって杉が育てられてきました。
ここで育つ「小国杉」は、長い年月をかけて地域の人々が守り、受け継いできた木です。

小国杉
OGUNI CEDAR
[小国杉]
学名:Cryptomeria japonica
ヒノキ科
森の中に入ると、空へ向かってまっすぐ伸びる杉の木が並びます。
一般的には50〜60年ほど育てた木が伐採され、その途中の20年、40年頃には間伐を行いながら森を整えていきます。
小国には270年を超えて育った杉もあるそう。
木部と枝葉の部分で香りの印象は異なり、今回のブレンド精油で使用する枝葉部分の香りは、フレッシュでフルーティーな木の香り。

一本の杉を倒す。実際の伐採現場へ

今回の取材では、実際の伐採現場にも入りました。

林業では「ハーベスター」と呼ばれる重機も使用しますが、山のすべての場所に機械が入れるわけではありません。
道路から重機のアームが届かない場所では、現在も人の手で木を伐採します。

木がどちらに傾いているのか。
倒したときに周囲の木へ引っかからないか。

一本一本の状態を確認しながら、倒す方向を慎重に計算します。
木に切れ込みを入れた後は、くさびとハンマーを使い、少しずつ木を傾けていきます。
そして重心が移動した瞬間、大きな杉が一気に地面へ。

森の中に響く音とともに杉が倒れる光景は、実際の現場に立って初めて分かる迫力がありました。

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山の仕事を左右する、季節と自然

今回訪れた伐採現場は、標高約500m。
夏の山は蒸し暑く、厳しい環境の中で作業が続きます。

一方、冬になると雪が積もり、重機が使えなくなることもあります。
雪が解けた後には地面がぬかるみ、作業が難しくなる場合も。

伐採は需要に応じて一年を通して行われていますが、杉は夏の成長期になると樹皮のすぐ下に多くの水分を含み、皮が剥がれやすくなります。
そのため、木材として扱う場合には、比較的樹皮が剥がれにくい冬の方が作業しやすいといいます。

一本の杉を森から送り出す仕事は、常に山の天候や季節と隣り合わせです。

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建材にならない枝葉部分をハサミで収穫する様子

木材だけではない。杉の「枝葉」を香りへ

小国杉は、主に建築用の木材として利用されています。
柱などに使われる木材は、色や年輪、曲がりなどによって品質が判断されます。

一般的には年輪が細かく詰まり、色の明るいものほど良質な材として評価されます。
一方、精油の原料として使われるのは、木材そのものではなく「枝葉」。
木材を生産する過程で生まれる杉の枝葉から香りを抽出することで、木を別の形でも生かしています。

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精油の抽出をしやすくするために粉砕機で枝葉を細かくカット

収穫から約3時間。鮮度を保ったまま蒸留へ

伐採した杉から集めた枝葉は、できるだけ早く蒸留施設へ運ばれます。
一度に収穫する枝葉は平均約100kgほど。

収穫後はすぐに細かく粉砕し、収穫からおよそ3時間後には蒸留が始まります。

小国杉の精油は、水蒸気蒸留法によって抽出します。
蒸留にはたくさんの枝葉を使いますが、そこから採れる精油はほんのわずか。
豊かな森の恵みが、ぎゅっと詰まったとても貴重な一滴です。

採れた精油は、品質を保つため冷暗所や冷蔵環境で大切に保管されています。

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蒸留直後の小国杉精油

蒸留したばかりの香りは、時間とともに変わっていく

蒸留直後の小国杉精油は、鼻に抜ける青々しさを感じる、とてもフレッシュな香り。
そこから少し時間が経つことで、角が取れ、徐々にまろやかな香りへと変化していきます。

爽やかな森の香りのなかに、どこか甘さも感じられる小国杉。
香りの主張が強すぎず、さまざまな精油と合わせやすいことも特徴なのだそうです。

実際に森を歩き、伐採されたばかりの杉に触れ、その後に蒸留された精油を嗅いでみると、ひとつの「杉の香り」の中にもさまざまな表情があることに気づきます。

 

地域の杉を、香りという新しい形で届ける

小国杉の精油づくりが始まったきっかけは、福岡県北九州市と小国町による環境分野での連携でした。

小国杉の香りを生かしたアロマ製品をつくれないか。
そんなアイデアをきっかけにプロジェクトが動き始め、2016年には小国杉100%のエッセンシャルオイルなどの販売がスタート。

建築材としてだけではなく、「香り」という形でも地域の杉を届ける。
長い林業の歴史を持つ小国町で、新しい小国杉の楽しみ方が広がっています。

 

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九州限定ブレンド精油「よかみず」

熊本県産小国杉や大分県産かぼすなどをブレンドして完成した、九州地方限定ブレンド精油「よかみず」。

テーマは、九州の豊かな自然を育む「水」。

今回、小国杉の森を実際に訪れ、木々に囲まれた静けさや、伐採したばかりの杉の青々しい香りに触れました。さらに、枝葉の収穫から蒸留までをたどることで、一本の杉から香りが生まれるまでの背景を知ることができました。

小国杉のフレッシュで清々しい香りは、大分県産かぼすのみずみずしく爽やかな香りなどと重なり、「よかみず」の香りを形づくっています。
大分県臼杵市のかぼすが育つ風景や、精油になるまでの工程については、前編でご紹介しています。

>>前編はこちら

 

植物を育て、守り、香りを生み出す人。

さまざまな土地で植物と向き合う人たちの仕事を経て、ひとつの香りが生まれます。

「よかみず」を手に取ったときには、大分のかぼす畑と、熊本・小国の杉林。
そしてその香りの背景に広がる九州の景色にも、少し思いを馳せていただけたら嬉しいです。

>>よかみずブレンドを詳しく見る


Text by O.T.A.

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