北海道・上富良野では、火山灰を含む水はけのよい土壌と寒暖差を生かしてラベンダーが栽培されています。
主力品種ひとつとして、香りのよさが人気の「おかむらさき」。
収穫したラベンダーは現地で蒸留され、1トンから約10kgの精油が採取されます。
北海道・上富良野のラベンダー畑を訪ねて
北海道エリア限定ブレンド精油「フラヌイブレンド」に使用しているラベンダー精油。
その原料となるラベンダーがどのような場所で育ち、どのように精油になるのかを知るため、上富良野の生産地を訪ねました。
火山と丘陵地がつくる、上富良野のラベンダー畑
上富良野のラベンダー畑を訪れて、まず印象に残るのがその景色です。
平らな土地に花畑が続くのではなく、ゆるやかな丘に沿うようにラベンダーが広がり、その背景には十勝岳連峰がそびえています。
この土地の特徴は、景観の美しさだけではありません。
十勝岳を有する火山地帯に位置する上富良野には、火山灰に由来する土壌が広がっています。
さらに、ラベンダー畑の多くは傾斜地につくられているため、水が一か所にたまりにくい環境です。
ラベンダーは過度な湿気を好まない植物。
火山性の土壌や水はけのよい丘陵地、そして夏と冬の気温差が大きい北海道ならではの気候。
こうしたいくつもの土地の条件が重なり、上富良野のラベンダーを育む環境をつくっています。
実は世界的なラベンダーの産地として知られる南フランス・プロバンス地方と緯度が近いことも、上富良野の興味深い特徴のひとつです。

LAVENDER
[ラベンダー]
学名:Lavandula angustifolia 'Okamurasaki'
シソ科
上富良野で栽培されているラベンダーの中でも、精油原料の中心となるのが「おかむらさき」です。
香りが豊かで、香料用のラベンダーとして大切に育てられてきた品種。
畑にはそのほかにも、主に観賞用として早咲きのラベンダーや、白色、ピンク色の花を咲かせる品種も植えられております。
地域の風景をつくる存在としてもラベンダーが大切に育てられています。
1948年頃から始まった、上富良野のラベンダー栽培
今では北海道を代表する風景となったラベンダーですが、もともとこの土地に自生していた植物ではありません。
上富良野でラベンダー栽培が始まったのは、1948年頃。
当時、フランスからラベンダーの種を輸入し、北海道内で栽培に適した土地を探していることを伝える農業新聞の記事が掲載されました。
その記事を目にした上富良野の農家数名が札幌の育成機関を訪れ、種を譲り受けたことが、この地でのラベンダー栽培の始まりと伝えられています。
そこから長い年月をかけて栽培が受け継がれ、現在では多くの人が夏の時期にラベンダーを目当てに上富良野を訪れるようになりました。
一枚の新聞記事と、数人の農家の行動から始まったラベンダー畑。
現在目の前に広がる紫色の風景を眺めると、その歴史の長さを感じます。
お話を伺った、かみふらの十勝岳観光協会 遠藤さん
一年を通してラベンダーを育てる。畑の仕事と収穫
ラベンダーの仕事は雪が解ける春に、畑の状態を確認することから一年が始まります。
そこから春から夏にかけて除草などの手入れを続け、7〜8月に収穫と蒸留の時期を迎えます。
そして冬になると、畑は一面の雪に覆われます。ラベンダーは雪の下で休眠し、次の春を待ちます。

地域の方とともにラベンダーの刈り取りをしている様子
北海道の短い夏。その中でも特に重要なのが、ラベンダーを刈り取るタイミングです。
観光地として考えれば、できるだけ長く満開のラベンダーを楽しんでもらいたい。
一方、精油の原料として考えれば、香りの状態を見ながら適した時期に収穫したい。
「見てもらうためのラベンダー」と「香りを採るためのラベンダー」。
その両方を考えながら、畑の状態や開花の進み具合を見極め、刈り取りのタイミングを判断しているそうです。
今回実際に刈り取りに参加し、北海道とはいえ日中の作業はなかなか暑さを感じましたが、漂うラベンダーの心地よい香りに癒されて気分はとても爽やかでした。

蒸留窯に収穫したラベンダーを入れ込む作業
刈り取ったラベンダーが精油になるまでの蒸留工程
収穫されたラベンダーは、蒸留によって精油になります。
今回の蒸留は、刈り取りからおよそ2日後に行いました。
乾燥させてから蒸留する場合もあるそうで、その際はおよそ半月ほど時間をかけます。
蒸留でまず、収穫したラベンダーを大きな蒸留釜いっぱいに詰めていく作業を約40分かけて行います。
今回収穫されたラベンダーは約1トンにもなりました。

そこから約60〜70分かけて蒸気を通し、ラベンダーに含まれる芳香成分を取り出します。
蒸留後のラベンダーを釜から取り出し、次の蒸留の準備をするところまで含めると、1回の工程は約2時間半。
精油の小さな瓶からはなかなか想像できない、大掛かりな作業です。

蒸留水の放出が終わり、精油が浮いてきた瞬間
1トンのラベンダーから採れる精油は、わずか約10kg
今回使用するラベンダーの量は約1トン。
フレッシュなラベンダーから採れる精油の割合はおよそ1%前後で、今回のラベンダーからは10kgほどの精油が採れました。
たくさんの花を集めても、そこから得られる精油はほんのわずか。
私たちが普段手にしている小さな精油瓶の背景には、広大な畑と、多くのラベンダー、そして栽培から蒸留までに携わる人たちの仕事があります。
採取された精油は、光や空気による影響をできるだけ抑えるため、気密性の高い遮光瓶に入れて大切に保管されます。
畑で感じる香りと、精油になった香りは違う
実際にラベンダー畑に立ってみると、普段精油から感じている香りとは少し違うことに気づきました。
畑で感じるのは、花の華やかな甘さだけではありません。
摘みたての植物を思わせる青々しさと、風が通り抜けるような清涼感。
周囲の土や草の香りも重なり、畑全体でひとつの香りをつくっているように感じます。
一方、蒸留された精油は、その中でもラベンダーそのものの香りがぎゅっと凝縮されたような印象。
甘さや爽やかさの奥に、深みのある香りを感じます。
海外産のラベンダー精油には、種類や産地によってしっかりとした重さを感じるものもありますが、今回取材した上富良野産のラベンダー精油は、甘さの中に清涼感のある爽やかさが印象的でした。
同じ「ラベンダー」という植物でも、品種や育った土地、気候、収穫時期などによって香りは変わります。
それも天然の香りのおもしろさです。
生産者に聞いた、ラベンダー畑を楽しむなら「早朝」
上富良野のラベンダーを最も感じられる時間はいつでしょうか。
生産者の方に伺うと、おすすめは「早朝」なのだそう。
まだ訪れる人も少なく、朝の澄んだ空気に包まれたラベンダー畑。
花の香りだけでなく、湿り気を含んだ土や植物の香りまで感じられ、一日の中でも特に心地よい時間だと教えていただきました。
夜にはライトアップやマーケットなども行われ、昼とは違ったラベンダー畑の魅力を伝える取り組みも続けられています。

蒸留後の湯気をまとうラベンダー
精油だけでは終わらない。蒸留後も地域の中で循環するラベンダー
精油を採った後には、大量のラベンダーが残ります。
蒸留後の植物は、基本的には畑へ戻され、再び土へと還っていきます。
また、蒸留の際には精油とともにラベンダーの芳香蒸留水(フローラルウォーター)も生まれます。
この蒸留水も捨てるのではなく、ラベンダー教室の体験に提供したり、お土産品として販売したりと活用されています。
精油だけを採って終わるのではなく、植物から得られるものをできるだけ生かす。
そこには、長くラベンダーとともに暮らしてきた地域ならではの工夫がありました。

上富良野の香りを、北海道限定ブレンド精油「フラヌイブレンド」へ
生活の木では、この上富良野産ラベンダー精油を、北海道限定ブレンド精油「フラヌイブレンド」に使用しています。
<フラヌイブレンドについて>
北海道の豊かな自然を、上富良野産ラベンダーの深みのある芳醇な香りで表現。
スモーキーで魅力的なパチュリ、さわやかで瑞々しいベルガモットが全体のハーモニーを奏でる、アロマティックな香りです。
「フラヌイ」とは、"香りのするところ"というアイヌ語。富良野の語源とも云われています。

火山性の土壌。
水はけのよい丘陵地。
夏から冬まで大きく変化する北海道の気候。
そして、一年を通してラベンダーを育て、その一瞬の収穫時期を見極める人たち。
上富良野のラベンダー精油は、こうしたさまざまな条件が重なって生まれています。
今回、生産地を訪れ、畑から蒸留までを実際に見ることで、一滴の精油の向こう側にある風景を知ることができました。
「フラヌイブレンド」では、その背景にある上富良野の風景も思い浮かべながら、香りを楽しんでいただけたら嬉しいです。
Text by O.T.A.




