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レモングラス

2018.07.05 TEXT by Keiichiro Tsuda (Perfumer)
レモングラス

数十年前に比べ、レストランや食堂が増えたように思うタイ料理店。
レシピ本もしかり、食材をはじめエスニックな調味料がスーパーに多く並ぶようになった気がします。
初めてタイ料理を食べたとき、今まで食べたことのない香りや味付けに衝撃を受けたのも記憶に新しく、
野菜やハーブがたくさん使われ、そのワイルドで刺激的な香りが見境なく味覚を楽しませてくれることに、
日本人の私からすると「え?食べ物にこの香り付けをするか??」と思ったくらい。
なんだか「元気」や「ハイテンション」を食べているような、そんな衝撃でした。

東南アジア全域で使用される食材や香辛料には、アロマテラピー素材にもみられるハーブやスパイスが
ふんだんに使用されます。バジルにコリアンダー(パクチー)、ジンジャーにクミン、ミント、セロリ、
ライムにキンカン、こぶみかんの葉(バイマックル)など。
その中でも言わずも知れたアジアンハーブの代表がレモングラス(Cymbopogon flexuosus/citratus)。
これがないとタイ料理は語れません。
 

レモングラスは熱帯性の草本植物、イネ科です。Cymbopogon flexuosusの方はインドが原産と言われ、
Cymbopogon citratusはスリランカ辺りが原産です。食材として、またアーユルヴェーダ素材やお香原料として
アジアをはじめ世界中で使用されています。
flexuosusの方が、硬く渋く少し燻したような香りが特徴、レモングラスそのものの部位で言い表すならflexuosusの香質は
根に近い硬く白い部分のような印象。一方citratusの方がリーフィーで青みがあり、幾分爽やか、葉先の青々した柔い部分の
ようで素直にレモン様と言えます。

フレグランスでは「Citric(シトリック)」という香調に分類されます。
シトラス様という意味の香調なのですが、これがまたフレグランスの面白いところ。
調香する上で、シトラス・柑橘原料(オレンジやレモン)を使用するとどうしても多少の果実・果肉感が出てしまいます。
また柑橘は香り飛びが早く、劣化も早い。化粧品に賦香したときに不安定な要因になり兼ねてしまうという特徴を持っています。
良くも悪くも植物の中では「果実」に分類されるわけで、製法も蒸留や抽出でなく、もっと物理的な「絞る」という
作業から得られるエッセンスで、どうしてもその生々しさが裏目に出てしまうことがあります。
そんな時に使用するのがこのシトリック素材。他にはシトロネラ、リツエアクベバ、時にエレミなどを使うこともあります。


レモングラスの香気成分の特徴と言えば、「Citral(シトラール)」がハイコンポーネントだということ。
flexuosusとcitratusどちらも70%~80%以上はこのシトラールが占めています。
夏やフレッシュさを想起させ、高揚を感じさせる明るいレモンの香りです。
異性体であるシス(cis)型はネラールといい、トランス(trans)型はゲラニアールの組み合わせからなっています。
またシトラールからは合成の香気成分イオノン(Ionon)を作ることができ(※イヨノンについてはイリスコラム参照)、
更にはビタミンAなどまで合成製造できるというもの。
シトラールは様々な香気へ変換することができる前駆体でもあります。

そのシトラールがレモングラスにはたくさん含まれているため、シトラールを採るため用に栽培されているレモングラスもあるほど。
私たちが知っている精油のその先に、別のものに姿を変えているものが、世の中に意外とたくさんあったりします。

 

そんなことを考えながら、タイ料理は食べませんが、
シトラールを多く含んだレモングラスが、暑い夏にリフレッシュをくれる素材であることは間違いありません。


 

 


●レモングラスの活用法
個人的にはレモングラスはハーブティーとして飲むのがとても好きです。
利尿作用があり、飲むとスッキリした気がします。アイスのレモングラスティーに更にレモンを搾って飲むのが好きです。

またレモングラスは、虫が遠ざかる香りとしても有名です。
夏の環境芳香に、またレジャー時の爽やかケアにおすすめの精油です。
シトラス素材やハーブ素材との相性がいいので、レモングラスの香りを活かしてなんでもブレンドしてみてください。


●レモングラスの注意点
レモングラス精油はトリートメントの中でもよく使用されると思います。
皮脂バランスを整えてくれたり、リンパの流れをスムーズにしてくれたりと言われています。
一点だけ、少し肌刺激を感じる場合がありますので、使用する際には少量からの香り付けにしましょう。


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