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Herb Travel 佐々木 薫ハーブ紀行 2017.3.29 ブルガリア・カザンラク ブルガリアンローズ

TEXT by Kaoru Sasaki

「バラの谷には5月半ばに行くがいい。バラの海に飛び込みたいなら・・・」最も香り高いとされるダマスクローズ精油は、神様が天国の一部を分け与えたといわれるブルガリア・バラの谷で産まれます。

バラの谷、カザンラク

5月中旬、ブルガリアンローズは年に1度の収穫の時期を迎えます。ブルガリアンローズ精油の素顔を知るために、早朝より始まる摘み取り作業から、蒸留、分析、品質管理まで、携わる人たちを訪ねました。

収穫から運搬まで

収穫はまだ肌寒い早朝から始まります。朝露の残る花々は、香水のように香りたちます。日が高くなると精油成分が蒸散してしまうため、午前11時がタイムリミット。農夫たちは両手を使いすばやく摘み取っていきます。熟練者は1袋約20~30kgを摘むそうです。摘んだ花をいかに早く蒸留するかが、高品質のエッセンシャルオイルを採るための大事な条件です。畑から運ばれたローズは、計量され、蒸留を待ちます。

Rose
[ローズ]Rosa damascena

バラ科

ダマスクローズ。
Rosaはラテン語で「バラ」を意味し、damascena「ダマスク産の」、もしくは「ダマスコ織」という織物に関係しているという説がある。
数あるバラの品種の中で、アロマテラピーや香料のためのローズ精油が採油されている代表的な品種は、

  • Rosa damascena(ロサ・ダマスケナ)
  • Rosa centifolia(ロサ・ケンティフォリア)
  • Rosa alba(ロサ・アルバ)

いずれもオールドローズと呼ばれる原種に近い品種のバラで一季咲。
主要成分はシトロネラール、ゲラニオール、ネロールなど。

カザンラクの精油蒸留所

カザンラクという町の名は「銅の釡のある場所」を意味します。バラの谷の住人たちはバラを育て、精油を蒸留してきた350年の歴史があります。バラの谷には大規模な蒸留所が複数あります。

精油の蒸留プロセス

銅製の伝統的な大型蒸留器
厳しく計量されたバラを釡に入れる
花に対し4倍の水を投入
保管容器「クンクマ」

ブルガリアンローズ精油の蒸留は、コホベーションというダブル蒸留法が行われます。蒸留の季節、蒸留所の敷地内はバラの香りでいっぱいです。

エッセンシャルオイルを取り出す作業は、オーナーだけに許された神聖な儀式。3トンのバラから精油はわずか1kgしかとれません。

国立ブルガリアローズ研究所

抽出されたエッセンシャルオイルは首都ソフィアにある研究所に運ばれ、ガスクロマトグラフィーを始め、様々な分析をかけます。厳しい基準をクリアしたものだけが「ブルガリアンローズ」として認定を受けます。ブルガリアンローズオイルは専任の技師の手により厳格な分析が行われます。最終的な品質を決定するのは機械ではなく、研究所長の「鼻」なのです。そのシステムこそがブルガリアンローズの高い品質を築き、守ってきました。

認定されたエッセンシャルオイルは蝋で封印されます。希釈したりブレンドしたり、何人の手も加えられないように。クンクマの口には中の精油を確認するためのサンプルを入れた木製のムスカリが付けられます。この中に精油を入れたガラス瓶が入っているのですが、こちらも同様にロウで封印されます。研究所の建物はもと銀行、地下の金庫が金より高いローズオイルの保管庫に使われていました。(2004年6月現在)

今現在、ブルガリアではシステムのいくつかは合理化され、より品質の高い管理が目指されています。しかし、ブルガリアンローズを守る心は変わっていません。

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